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正しい産婦人科の選び方

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「運動や胎教で安産になる」のウソ

「こんな運動をすれば安産になる」「熱心に胎教をしたから安産になった」――近頃は妊婦さんの周囲に、そうした情報があふれています。

しかし私は「何か一つこれをしたから安産になる」という発想は、疑ってかからなければいけないと考えています。そうした情報・サービスには、往々にして商業的な意図が絡んでいるからです。

妊娠中の運動では、産婦人科に併設されたスタジオや教室で医師の管理のもとに行われているものは良いのですが、最近では、医療機関以外で行われる妊婦向け運動プログラムも登場しています。なかには血圧が高めなど、トラブルがある人でもできるもの、体調によらず誰もが参加できるような垣根の低いサービスが増えていて、安全面が懸念されます。

胎教についても、さまざまなメソッドやCDなどのグッズが販売されています。母親がある方法でお腹の赤ちゃんに呼びかけると赤ちゃんが反応してお腹を蹴る、といったものもありますが、羊水の中に浮いている赤ちゃんの動きを正しく感じ取るのは現実には難しいはずです。呼びかけ程度であれば特に悪い影響もないかもしれませんが、安産につながる保証はないと私は思います。

では、そもそも、「安産」とは何でしょうか。

経膣分娩で自然に生まれるお産、あまり苦しまずに生まれる軽いお産、医療介入のできるだけ少ないお産、最近ではそうしたイメージを持つ人が多いかもしれません。産科医のなかにも、あまり時間がかからずスルリと生まれたようなケースを「安産だったね」と表現する人もいますが、私はこの「安産」という言葉が嫌いです。

分娩の途中で母子の安全のために緊急帝王切開になったとしても、それによって母と子のダメージが最小限ですみ、無事に誕生を迎えることができたのなら、それは一般の安産のイメージとは違っても、十分に「良いお産」といえます。

分娩の方法やかかった時間、医療介入の程度などによって「安産か、そうでないか」を評価するのは、命がけで分娩に立ち向かう母と子に対して失礼です。

また妊婦さんの側も痛みや負担の少ない「安産」を求めるあまり、安産になると謳う情報やサービスに振り回され、日常の健康管理や食生活などの大切なことを見落としていないか、今一度、冷静になって考えてみてほしいと思います。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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