妊娠の成立の時点から、その後の妊婦健診でも活躍するのが超音波検査です。妊娠中に行う超音波検査には次のような種類があり、医師が目的によって使い分けます。
・経膣法
超音波を発する先の丸い棒状の器具を膣のなかに入れて、検査します。この方法は至近距離から子宮のなかを観察できるのがメリットで、画像が精密で細かい部分もよく観察できます。
この検査で妊娠4〜5週には胎嚢が確認でき、妊娠6週を過ぎると胎芽の心拍も確認できます。妊娠初期には子宮筋腫や卵巣嚢腫などの疾患がないかどうかのチェックも行います。妊娠8週目からは胎児の頭や胴体、手足が識別できるようになり、9〜10週目には胎児の大きさを測定して、妊娠週数を計算し直すこともあります。
・経腹法
超音波断層検査の一つで、お腹の皮膚の上から器具を当てて画像を得る方法です。痛みや抵抗がなく、超音波源から離れた部分や広い範囲を観察できるという特徴があります。おもに妊娠中期から、分娩の直前まで使われます。
・カラードップラー法
臍帯(さいたい:赤ちゃんと胎盤をつなぐ、通称へその緒)や、胎児の心臓、腎臓、脳などの臓器ごとに血液の流れる量や速さを測定するもの。臍帯が胎児より下方にあると(臍帯下垂:さいたいかすい)分娩時に危険を伴うため、帝王切開になりますが、そうした臍帯の状態や臍帯の血管の本数、心臓の形の異常なども確認できます。
・3D法・4D法
子宮のなかの赤ちゃんのようすを3Dの立体画像で再現する方法です。赤ちゃんの体の表面の形態がよくわかり、表情や指先の形などもリアルな画像として見られるのが特徴で、動いている状態を動画で観察できるものを4Dといいます。これらはほかの検査法と違って胎児の成長や元気さの診断には使えません。経膣法や経腹法、ドップラーなどと併せて使用する必要があります。
こうした超音波検査が産科の診療に普及して以来、子宮のなかの胎児のようすがかなり詳細にわかるようになりました。お腹の赤ちゃんを画像で見られることは、母親にとってうれしいことでしょう。
ただ超音波検査をしている時期は、まだ慎重に経過を見守るべき段階です。
これから自分を律して赤ちゃんを守らなければいけないという現実を忘れてしまい、つい喜びが先行してしまうと、それが油断につながり、結果的にトラブルに至る例が少なくありません。
妊婦健診で医師が超音波画像を妊婦さんに差し上げるのは、決して記念のためではなく、その時期の赤ちゃんを見て、わが子を守るために何をすべきかを真剣に考えてもらうためです。
そのことを忘れないようにしてほしいと思います。