現在の日本の女性が第一子を産む平均年齢は、30.7歳です(2015年厚生労働省)。
日本では30年くらい前までは、30歳を過ぎる初産を「高齢出産」と定義していました。その後、欧米各国では35歳が境界と考えられていたことや、日本でも産科医療の進歩により高齢出産の安全性が以前より高まったため、基準が見直されて35歳以上の初産を高齢出産と呼ぶようになりました。つまり、以前は高齢出産と考えられていた年齢が、現在の平均初産年齢なのです。
そして初産だけでなく第二子以降の出産も含めると、今や35歳以上の出産は全国平均で4人に1人、東京都では実に3人に1人に上るといわれます。30代、40代の出産が当たり前になると、20代で初産を迎える女性が多かった時代に比べ、リスクの高い妊婦さんの割合も当然、グンと増えます。
今の30代女性は、気持ち的にも外見的にも若々しく、20代女性と変わらないように見える人もたくさんいます。しかし、30代の半ばを過ぎる頃から、女性の体の中は確実に変化しています。
まず、35歳を過ぎると卵子の細胞分裂に異常が生じやすくなり、染色体異常や流産の確率が高くなります。また血管の柔軟性や臓器の機能が少しずつ低下していることもあり、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった、妊娠中の合併症を起こす確率も上がります。
そもそも妊娠前から高血圧や心臓疾患、糖尿病といった持病を持っている人の割合も増えます。さらに分娩の際には、子宮口から会陰に続く産道の組織が伸びにくく、帝王切開を選択するケースが圧倒的に多くなります。
もちろん35歳以上の出産といっても、実際には体格や体質、それまでの生活習慣や環境などによって個人差がとても大きく、全員が同じレベルのリスクというわけではありません。また体力的には20代にはかないませんが、精神的な安定・タフさという面では、むしろ年齢の高い妊婦さんのほうが有利ということもあります。
ただ、高齢出産はそれ以前の年齢に比べてリスクが高いのは世界的な事実です。その大前提をよく理解し、必要な対策をしっかり考えて準備しておかなければなりません。
最近は高齢出産が増えていることもあり、「年齢的には高齢出産だけど、私はずっと健康だから大丈夫」「35歳、36歳は、まだまだ若い」――そんな感覚の人もいるようですが、そうした油断や過信は禁物です。30代半ば以上で出産に臨む女性は、年齢という自分の抱えている弱点から、どうか目をそらさないでください。そしてリスクを少しでも少なくできるように努力を重ねていくことが、結果的に良い出産につながります。