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妊娠中の運動で体重コントロールはできない

妊娠中の活動として、水泳やエアロビクスといった運動・アクティビティを行う人も多くなっています。

妊娠中の運動は、体を動かすことで血行が促進され、心身のリフレッシュになる、分娩を乗り切るための体力が身につく、腰痛や肩こり、便秘、静脈瘤といった不快症状の予防になる、妊婦仲間・友達づくりに役立つなど、さまざまな効用が謳われています。

日本産婦人科医会でもウォーキングや水泳、体操などの全身を使う有酸素運動は、母体の安全を前提に、適切な範囲であれば妊娠中に行ってよいとしています。

なかでも人気が高いのが水泳です。日本で初めてマタニティ・スイミングを始められたのは、私の学生時代に運動部の顧問をしていただいていた先生です。当時、アメリカで広まりつつあった妊婦水泳のプログラムを日本で取り入れ、自ら率先してプールにも入り、熱心に妊婦さんたちの指導をされていました。

今でこそ、「安産になるために」とマタニティ・スイミングをする妊婦さんは珍しくありませんが、当初は少し様子が異なっていたようです。

まず妊娠中の水泳を希望する妊婦さんたちは、健康状態や妊娠中の経過が良く、リスクのもっとも少ないグループに属していたこと。

さらに母体や胎児の健康管理について意識が高く、学歴や世帯所得も高い、いろいろな意味でゆとりのある女性が中心でした。そして、妊娠中に異常が発生した場合は中止させていたそうです。そのために「妊婦水泳をしている女性は安産が多い」という結果が得られたというのです。

つまり「水泳をお産まで継続できる(くらいに健康状態が良く意識が高い)人は、安産になりやすい」というご指導が、後年「水泳をすると安産になる」という話にすり替わり、原因と結果が逆になってしまったわけです。

そして現在は、体調やリスクの個人差を考慮せずに、誰も彼もが自己判断での運動をするようになり、かえってトラブルを増やしているように思います。

ことに妊娠中の女性が「体重が増えすぎてしまったので、運動で体重を減らそう」と考えるのは、たいへん危険です。妊娠していないときですら運動だけで体重を落とすのは容易ではありません。まして妊娠中の運動は運動量が少なく、強度も軽くしたプログラムになっていますから、それで体重が落ちるはずがありません。

もし無理をして長時間の運動や強度の強い運動をすれば、体に大きな負担がかかり、切迫流産・早産などを起こす危険性が高まります。妊娠中の体重コントロールは、運動より毎日の食事で取り組んだほうが安心ですし、効果も上がります。

そもそも妊娠中の運動は、しなければいけないものではありません。無理をしないように十分気をつけてください。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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