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正しい産婦人科の選び方

あなたの素晴らしい赤ちゃんの誕生のために、
妊娠・出産について一緒に考えてみましょう。
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出産の25%に医療が介入している理由

妊娠に関して、もともとリスクが高い人というのがあります。たとえば高齢出産の人、妊娠前から心臓や腎臓に持病を抱えている人などがそうです。

また妊娠して妊娠高血圧症候群(以前は妊娠中毒症と呼ばれました)になった人や双子以上の多胎妊娠、胎盤の異常なども、ハイリスク妊娠に含まれます。

もともとリスクが高い妊娠でトラブルを経験するのは、理屈としては理解できます。しかし皆さんに知っていただきたいのは、そうしたリスクがないと考えられるケースでもトラブルは起こる、という事実です。

若く健康で特に持病もなく、妊娠中の経過もずっと順調。「ふつうの経膣分娩で、まず問題はない」と医師が判断した出産のうち、実に20~25%は、分娩時に何らかの医療介入が必要になっています。

医療介入とは、母体や胎児・新生児の生命を守るために医師が判断して行う医療処置です。赤ちゃんの命が危ぶまれるときに行われる「緊急帝王切開」や、専用器具を使って赤ちゃんを引き出す「吸引分別」、「鉗子分娩(かんしぶんべん)」などが、その代表です。

これは、妊娠中に繰り返し健診を受け、骨盤の大きさや形状、胎児の状態など、すべてに問題がなくても、4~5件に1件は医師の適切な処置がなければ、母体もしくは子どもが危険な状態に陥る可能性があったといわれます。

私自身も経験しましたが、こうした危険な状態の患者さんが運ばれてくる産科救急の現場は、まさに修羅場です。子宮や産道の破裂で出血性ショックによる意識不明など、本当に命が危ない状態になって運ばれてくるのが普通で、最悪のケースでは、母体も胎児もすでに死亡した状態で運びこまれることもあります。どれほど救いたいと願っても救えない、そんな状態の妊婦さんを医師たちは次々に診ていきます。

この産科救急の過酷さは、一般の救急外来にはないシビアな局面が多々あります。それほど緊急性が高く、判断や処置のスピード感が違うのです。

現代日本の妊婦さんやご家族には、「何かあったときは病院に駆けつければ、医師がなんとかしてくれる」と思っている人が少なくないようです。しかし妊娠中や分娩時の本当の緊急事態というのは、産科救急の医師にも救命が難しい例が少なくありません。そうした患者さんの多くは大学病院のような高度な医療施設に救急搬送されますが、それでも一命をとりとめるのが困難な症例もあります。

妊婦さんやご家族を脅かすわけでは決してありませんが、妊娠・出産においてはそういう過酷な現実があることも、一つの知識として知っておいてほしいと思います。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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