妊婦さんが良いお産をするために目指すべきいちばんの目標とは、赤ちゃんをお腹のなかで十分に成長させ、出産を迎える環境を整えることです。
それは具体的にいうと「妊娠37週以降、胎児の体重2500g以上、母子ともに元気」という状態です。この段階まで無事に過ごすことができれば、赤ちゃんは子宮の外に出ても十分に生きていく力を蓄えています。
また37週を過ぎれば、母体のほうもいつ陣痛・分娩が始まってもよいように準備ができている時期になります。37週を過ぎて、規則的なお腹の張りと痛みが起こるようになったら、いよいよお産の始まりです。
最初は子宮が収縮して痛む時間と痛みが遠のく時間とがあり、その間隔も長いのが普通です。痛みの来るタイミングが徐々に短くなり、10分間隔になったら、「陣痛開始」の合図として産院に連絡をします。
一般に、陣痛開始から出産までにかかる時間は、初産婦の場合で平均12〜16時間、経産婦の場合は5〜8時間ほどです。赤ちゃんが誕生するまでにはまだ時間がある場合が多いので、落ち着いて対応することが大事です。
産院に到着したら、分娩に備えて必要な診察や準備をします。
医師は、陣痛の進み具合に合わせて、子宮からの出口にあたる子宮頸部の軟らかさや、子宮口の開き方を確認します。
子宮頸部は2種類の線維(コラーゲン)でできていて、出産が近づくとまず唇ぐらいの軟らかさになります。さらに出産時には2種類のうちの1種類は水解という酵素による反応で分解され、残りもさらに薄く伸びて軟化し、マシュマロのような軟らかさになります。
こうして子宮頸部が十分に熟化して、子宮口が全開になったときに、赤ちゃんが出てこられる準備が整ったことを意味します。
分娩の経過中に大切なのは、赤ちゃんの通り道、つまり産道をまっすぐにして、少しでも赤ちゃんがラクに出られるようにすることです。
赤ちゃんが降りてきたら、さらにお腹を見るようにして丸くなると子宮口から膣、会陰までの産道がきれいな円弧状の一本の筒のようになり、赤ちゃんがスムーズに出られます。
反対に、分娩の瞬間にやってはいけないのは体を反らせたり、捻じってたりしてしまうことです。体を反ったり捻じったりすれば、それだけ産道がゆがんで曲がり、赤ちゃんが出にくくなります。
一つ一つの動作の意味をよく考え、体を丸めて全身が産道になったようなイメージで、分娩に臨んでください。
分娩は女性にとってたいへんな大仕事ですが、頑張っているのはお母さんだけではありません。赤ちゃんも頑張っています。赤ちゃんが少しでも出やすいようにと考えて、分娩を乗り切っていきましょう。