妊娠・出産では、周囲の人との人間関係にも種々の変化が生じます。
最近では仕事を持つ女性が多いため、妊娠・出産と仕事との間で、どのようにバランスをとるかも難しい問題になっています。
ネットやメディアでは、職場でのマタニティ・ハラスメントの話題もよく取り沙汰されていて、まだまだ社会の理解が少なく、「安心して産める社会」にはほど遠いと感じる妊婦さんも少なくないようです。
ただその一方で、「妊婦だから配慮を受けて当然」という態度の人は、なかなか周囲の理解を得にくいものです。
働く女性が妊娠した場合、法律的には妊婦健診を受ける時間を確保する、時間外労働を減らす、希望によって時差出勤、時短勤務ができるといった母性保護の規定があります。
しかし、そうした措置を無理なく行える職場はおそらく限られています。
限られた人員でギリギリの仕事をしているような環境で、妊娠したことを特権のように振りかざして自分の権利だけを主張すれば、周りの人には「いい迷惑」となるのも当然です。
自分が妊娠中の時短勤務や産前産後休暇で仕事を抜ければ、その分の仕事を別の誰かが担うことになり、職場の人に直接・間接に手間をかけるのは確かです。
そのことを気遣って「ご迷惑をかけますが」と謙虚な姿勢で「協力をお願いできる」人になりましょう。
また、妊娠・出産によって、両親との関係が変わってくることもあります。
最近、気になるのは、妊婦さんに対して“間違った甘やかし方”をする親が少なくないことです。
待望の孫の誕生に、当事者の夫婦よりも両親のほうが舞い上がってしまい、お腹が張りやすいのに「里帰りで帰ってこい」と勧めたり、体重管理をしなければならないのに、上げ膳据え膳で太る生活をさせてしまったりするケースは結構あります。
妊婦さんにも実家の親に頼って安心したい気持ちがあるのはわかりますが、それがリスクになるようなときは、あえて距離を置いて自己管理を続けられるようにするべきです。
また、出産が近くなると「まだ生まれないのか」と毎日電話をしてくる親もいると聞きます。実際に姑からの毎日の電話攻勢で、お嫁さんが参ってしまった例もあります。夫のご両親が妊婦さんのプレッシャーになるときは、夫が親にきちんと話をしてほしいと思います。
妊娠・出産・育児の主体になるのは、親ではなく夫婦です。
それを確認しあう意味でも、両親と話し合っておくことも必要でしょう。
出産はゴールではなく、むしろこれから始まる長い子育てのスタートです。
そこでは周囲の人の手を借りながら、社会のなかで子育てをしていくわけですから、賢い親になるには、周囲の人に快く協力をしてもらえるような社会性も身に付けてください。