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正しい産婦人科の選び方

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「産み方」を好みで選んではいけない理由

最近は「分娩方法や出産スタイルを自分で選ぶ」ことが、妊婦さんの間で当たり前のように考えられています。

近年注目が集まっているのが、フリースタイル出産です。医療機関での分娩は通常、分娩台に上がって仰向けの姿勢になって行います。それに対し、フリースタイルは分娩台を用いず、横向きになったりしゃがんだり、うつ伏せの姿勢など、妊婦さんの好きな姿勢で分娩に臨むものです。もともとは英国で始まったアクティブ・バースと呼ばれる出産スタイルの一つで、最近は日本の医療機関や助産院でも、この方法を取り入れる施設が増えています。

しかし、誰もが「自分の好み」で体位を選べると思うことは、大きな危険を伴います。

そもそも人類の分娩の体位・姿勢というのは、人種や民族によってそれぞれ異なります。各地の民族の何千年という歴史のなかで種々の方法が試みられ、結果的にその民族にもっとも合った方法が選ばれ、受け継がれてきているからです。

たとえばアフリカ系の人では、床に両手や膝をついてうつむきになった姿勢で産むのが一般的です。また欧米系の人では座位といって、上体を起こした姿勢やしゃがんだ姿勢で産むスタイルもよくあります。

ここで考えなければならないのは、黒人や欧米人と日本人では、体格も体質も骨盤の形も大きさも異なるということです。さらにいえば、皮膚や組織の性質も異なります。

私は外国人の方のお産も数多く経験してきましたが、外国人はおおむね産道の伸展がよく、特に黒人の妊婦さんは日本人と比較すると信じられないほど皮膚が伸びます。

同じアジア人種でも、中国人と日本人ではまた違い、日本人は他の人種・民族と比較すると皮膚が伸びにくく、組織も弱いと思います。そのため、外国から入ってきた出産体位を日本人がそのまま真似しようとすると危険な場合もあります。ときには外陰の皮膚が肛門や尿道まで裂けるような大惨事になることもあります。

もちろん体格や体質には個人差があるので、日本人でもフリースタイルで何事もなく出産されているケースもあります。しかし、それを「誰もが出産方法を好きに選べる」とは考えないほうがいいということです。

分娩方法や出産スタイルは、何よりも「赤ちゃんと母体にとって、もっともリスクが少ない方法」であるべきです。体格や年齢といった自分の置かれた条件において、できることのなかからベターなものを選ぶのはよいことです。しかし分娩台の上で脚を開いて産むのは嫌だからと、スタイル自体を目的にして、分娩法を選ぶのは間違いではないでしょうか。

分娩で大切なのは、姿勢や体位にこだわることではありません。「いかにして産道という出口を広げ、赤ちゃんがより少ない負担でスムーズに出てこられる状態をつくるか」です。

医師ともよく相談しながら、最適な分娩法を検討しましょう。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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