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お腹の張りは「休め」のサイン

妊娠中に特有の症状には、「お腹の張り」もあります。

お腹の張りは、子宮が大きくなり始める妊娠5カ月頃から起きやすくなり、妊娠7〜8カ月頃からは頻度が多くなります。また妊娠37週以降によくお腹が張るようになるのは、前駆陣痛といって母体が出産の準備をしている兆候です。

お腹が張る原因は、おもに子宮の収縮です。疲労や過度のストレス、体の冷えがあるとき、また立ち仕事をしている人などに起きやすいという特徴があります。

強いお腹の張りや出血をともなう張りは、流産・早産や切迫流産・切迫早産の可能性があるので注意しなければなりません。またお腹がカチカチに硬くなり、激しい腹痛と出血があるときは、胎盤が子宮壁から剥がれてしまう常位胎盤早期剝離も考えられるので、一刻も早く受診する必要があります。

一方、お腹の張りがあっても、しばらく安静にしていると治まるようであれば、大きな問題はないと一般にはいわれます。

ただし、さほど強い張りでなく出血もないお腹の張りなら、まったく気にしなくていいかというと、決してそうではありません。お腹が張っている状態とは、子宮が強く収縮し、子宮内の胎盤の血流も悪くなっていることを表します。赤ちゃんにとって命綱である胎盤の血流が悪くなれば、運ばれる栄養や酸素も少なくなり、胎盤自体の発育にも、胎児の成長にも悪影響を及ぼします。

妊娠している女性の体は、お腹の張りによって「疲労や冷えで胎盤の血流が悪くなっているから、休んで体を労わって」というサインを出しているのです。

最近よくお腹が張ると感じていながら、「すぐ治るから大丈夫」とそのまま動き続けたり、場合によっては、病院で張り止めの薬をもらってハードな仕事を続けるような人もいますが、そのときお腹の赤ちゃんの環境がどうなっているのか、よく考えてみる必要があります。

なかには、お腹が強く張っているのに、それに気づかない妊婦さんもいます。

以前にも、お腹の張りがあるのに妊婦エクササイズなどを続けていて、切迫早産で入院した人がいました。その妊婦さんは、入院して安静と薬によってお腹の張りが取れたときに「これが、張っていないお腹なんですね」と感嘆していて、私もスタッフも驚いたことがあります。

妊娠中は常に体調に意識を向け、せめてお腹が張っているか否かは自覚できるようにしてください。そして張りに気付いたら、休憩をとったり横になってリラックスし、胎盤にしっかり血液が流れるようにしましょう。

なお休んでもお腹の張りがとれないときや周期的な張りを感じたときは、流産・早産や胎盤の異常などの危険な兆候です。すぐに主治医へ問い合わせてください。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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