お腹の赤ちゃんを守るために

menu

正しい産婦人科の選び方

あなたの素晴らしい赤ちゃんの誕生のために、
妊娠・出産について一緒に考えてみましょう。
監修者のメッセージはこちら

早産の基礎知識とそのリスク

妊娠中のトラブルは母体にとって危険なだけでなく、胎児の健康にも大きく関わります。

妊娠22歳未満に胎児が亡くなり、妊娠が中断することを「流産」といいます。

妊娠のごく早い時期である12週未満に起こる流産は、染色体異常などの胎児側の問題が原因になっているケースが圧倒的多数です。しかしそれ以降の流産では、子宮内感染や無理をしてお腹が張ってしまったなど、母体側の問題によって妊娠が継続できなくなる割合が増えていきます。

妊娠22週以降は、胎児が母親の胎内から出ても生きていける可能性があるため、「早産」に分類されますが、早産も母体の状態により誘発されるケースは少なくありません。

無理をして子宮口が開いた、妊娠高血圧症候群や前期破水といったことが原因で、妊娠母体の中でいったん早産のサイクルが動き始めると、それを止めるのは容易ではありません。切迫早産になると、産科医は母親に絶対安静を指示し、子宮収縮を抑える薬などを使って、赤ちゃんをできるだけ長く母親の胎内にとどめておけるよう力を尽くしますが、それでも止められない早産は少なくありません。

今は、産科医療や新生児医療が進歩しているため「万一早産になっても、赤ちゃんの命を救えるケースも多いはず」と思う人もいるかもしれません。

確かに、医療技術の進展とMFICU(母体・胎児集中治療室)やNICU(新生児集中治療室) といった医療体制が各地に整備されたことにより、現在の日本では妊娠24週、体重500g前後という超低体重出生児でも、生存率は70~80%にまで上がっています。妊娠28週以降で胎児の体重が1000gを超えると、救命の確率は95%を超えます。

しかし忘れてはならないのは、早産で生まれた赤ちゃんは、妊娠37~41週の正期産で生まれた赤ちゃんと同じではない、ということです。

以前は早産で生まれた子を「未熟児」と呼んだように、妊娠週数が早いほど、また体重が少ないほど、赤ちゃんの体は未熟な状態で、外界に出たときの弊害は大きくなります。脳や肺、心臓、目などの臓器が未完成で、特有の障害を負ってしまったり、生後すぐから高度な治療を続ければならなかったりするケースも珍しくありません。

もちろん早産で生まれても、後遺症を残さずに無事に成長していくお子さんもいます。ただ医療の進んだ日本は、早産でも救命できる命が多い分、早産の後遺症に苦しむ親子の数も他国に比べて多い傾向にあります。この事実は、マスコミや育児書等でもほとんど取り上げられることはありません。

これから親になる人たちには、わが子に早産による治療を受けさせずに済むよう、お腹の赤ちゃんに対して細心の心配りをしてほしいと思います。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

関連記事