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正しい産婦人科の選び方

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産科を選ぶ際にチェックしたい4つのポイント

母子ともに健やかに出産の日を迎えるためには、「出産する施設選び」はとても重要です。

とはいえ、信頼のおける産科をどのように選べばいいかは、一般の人から見てなかなかわかりにくいのも事実です。そこで専門家の視点から、皆さんに知っておいてほしい産科選びのポイントを、以下に挙げておきます。

 

①「大きな病院なら安心」ではない

 日本人の場合、小規模のクリニックよりも大きな総合病院のほうが安心という心理が働きがちです。しかしお産に関しては、それはまったく当てはまりません。

まず、妊娠の管理で一番大切なのは、「いかにトラブルを起こさないように日頃の健診で指導・管理していくか」です。その日常診療の内容が、分娩のときに緊急事態を発生させづらくする、また、発生した場合の対応をスピーディにする布石となるのです。

妊娠・出産は自然現象ですから、産科は「自然現象への対応」が求められます。つまり、疾患が確定してそれに対する診療を行う他診療科とは異なり、発症する前の段階、初期対応のスピードが重要です。これは、患者様を診ている産婦人科医一人ひとり、また産科単科の能力と対応のスピードが予後を決めるのです。これは、大学病院や1000床クラスまた数百床クラスの病院などに勤務してきた私が痛感していることです。

よく大きな病院の医師は(かつては私もそうでしたが)「うちは産科だけでなく脳外科や循環器科、救急まで、全科そろっていますから安心です」と強調しがちです。しかし産科の救急対応というのは、10分単位で患者さんの状態が変化していく過酷な状況ですから、その場で対応する医師個人のジャッジが状況を大きく左右します。他科が院内にあったとしても、産科の知識のない、また個々の患者さんを理解していない医師が何人集まっても、発症初期の症状に対応できないことも少なくないのです。

産科選びでもっとも大切なのは、その患者自身の診療にあたる産科医個人がどれだけ高い産科の医療技術や豊富な経験をもっているか、事前にその患者さんを理解しているかです。緊急時にはそうしたスキルをもって対応する医師とそれを支えるスタッフのいる施設を選ぶと安心です。反対に、「何かあったきときは近くの大きな病院へ救急搬送します」とだけ言う産科や「当院には他科もあるので、他科に相談します」という産科は避けるべきでしょう。産科診療を妊娠・出産に対する予防医学として考えると、患者さん個人と、医師・施設の間での心の通ったコミュニケーションをもとにした妊娠管理が非常に重要なのです。つまり、既に起こってしまった、診断のついた重症疾患に対応するのも大変ですが、何が起きるかわからない「一般の妊婦さん」のうちから一人ひとりの問題点を発見し、理解し、マネジメントし、管理しぬくほうが難しいのです。

 

②ネットの情報だけに惑わされない

 最近は、ホームページで写真映えのする立派な外観や美しい内装、豪華な食事などをメインにアピールしている産院も多くなっています。またネットのランキングでやたらと上位に出てくる産院ならば良さそう、と思う人もいるかもしれません。

しかし、こうしたインターネットの情報を鵜呑みにするのは危険です。よく考えればわかることですが、建物や内装のきれいさは、産科医の医療技術の高低やその施設の実力とはなんら関係はありません。またネット上のランキングも、商業的に操作されている情報の場合もあります。

最初の情報収集はインターネットを活用するのもいいと思いますが、その後は、実際に産院に足を運んで医師やスタッフと話をしてみたり、地域の人の評判を聞いてみたりするなどして、信頼のおける施設か否かを総合的に判断しましょう。

 

③「やさしいことしか言わない医師」は要注意

 「妊娠中のうちに旅行に行きたい」「体重がオーバーしがちだけど、多めに見てほしい」。そんな妊婦さんの希望に、なんでも「いいですよ」とやさしく答えてくれる医師は、一見親切に見えますが、実はそうではありません。

ふだん耳触りのいいことしか言わず、いざトラブルが起きたら、危機的な状況の妊婦さんを他施設に「紹介する」という名のもとに“放り出してしまう”産科医もいるので、注意してください。

何より赤ちゃんと母体を守るために「旅行や無理な運動は控えてください」「体重管理をしっかりするように」「食事には十分に気を配って」と、言いにくいことも含めて一人ひとりに合った親身な指導をしてくれるのが、本当のプロフェッショナルです。ただ“患者受け”のいいことを言うだけ医師なのか、責任と愛情をもって指導をしてくれる医師なのか、よく見極めてください。

 

④「分娩数」や「開業年数」は、信頼と技術の高さの指標

 具体的な産科選びでは、分娩数や開業年数をチェックするのもおすすめです。

分娩数を一定数以上の水準で維持しているところは、医師もスタッフもたくさんの症例を見ているため、やはりそれだけ経験と医療技術、緊急の対応ノウハウが磨かれている確率が高くなります。

開業からある程度年月を経ている産科施設や、代々同じ地域で産科施設を続けているようなところも、長期間、患者さんや地域の方々から信頼を得てきた証といえます。特に初産の後、第2 子、第3子も同じ産院で出産したというリピート率が高いところに注目してください。妊娠中から分娩・産後・新生児ケアまで、すべてにおいて医師やスタッフの対応の質が高いときに、「またここで産みたい」「家族・友人にここでお産させたい」という評価につながる場合が多いからです。

 

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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