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正しい産婦人科の選び方

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知っておきたい陣痛の役割

妊娠中の苦痛や不安の最大のものといえば、分娩のときの陣痛の痛みではないでしょうか。

出産経験のある人から「それまでの人生で経験したことのない痛み」といった話を聞いて、自分がその凄まじい痛みに耐えられるのかと、不安にかられる妊婦さんが本当に大勢います。

そして陣痛の痛みを和らげるといわれる呼吸法やリラクゼーション法を探して、必死に練習を繰り返したり、なかには「私は痛みに敏感できっと陣痛に耐えられないから、『無痛分娩』で産める病院を選ぶ」という人もいます。産科の医療機関でも「痛みが少なくラクに産める」出産方法を殊更に強調しているようなところもあります。

しかし、陣痛のときに経験する痛みは、“悪いもの”なのでしょうか?

私は陣痛の痛みにも生命誕生における役割、痛みそのものの意味があると思っています。

出産の条件が整ったとき、母体の子宮は強く収縮して赤ちゃんを押し出す力になります。しかし赤ちゃんは、産道という狭い道を通って出てくるため、子宮の収縮だけでは力が足りない場合が少なくありません。そのときに赤ちゃんを後押しする力になるのが、母親のいきむ力です。もし陣痛に痛みが伴わなかったら、子宮の収縮やお産の進み具合に合わせて、タイミングよく体に力を入れ、いきむことができるでしょうか? おそらく無理だと思います。

人は痛みがあるときにはごく自然に体に力が入り、歯を食いしばります。分娩時でもそれは同じで、子宮の収縮が痛みを伴うことで、収縮に合わせたタイミングでグッと自然にいきむことができます。つまり、陣痛の痛みは「いきむタイミング」を妊婦さんに教えてくれているのです。

「痛み」をただ悪いもの、嫌なものと決めつけて拒絶反応を持ったまま分娩に臨んでしまうと、気持ちの面でも分娩を乗り切れない可能性もあります。陣痛の意味を理解して、痛みはむしろ赤ちゃんを送り出すタイミングを知らせてくれる指南役と考えて、上手に付き合ってください。

私は、分娩のしくみを考えず「痛みを悪いものと決めつけて避けること」だけを希望したり、目的として行われる無痛分娩には反対です。

たとえば高血圧などで、いきみすぎると血管破裂のリスクがあるようなときや、陣痛の痛みで何日も眠れないようなときは、無痛分娩で痛みを取って少し休ませてあげるのは有効なマネジメントです。また、緊張が強くて分娩がうまく進められない場合、痛みを取ってリラックスさせるのも有効なマネジメントです。しかし、ただ「痛いのが嫌」という理由で何もディスカッションしないで無痛分娩を選ぶのは、嫌なことから逃げているだけです。

お産のとき、苦痛に耐えているのは母親だけではありません。むしろ、関門を乗り越えようとして頑張っているのは赤ちゃんのほうです。赤ちゃんのことを十分に考えて、分娩という大仕事に向き合ってください。

それを理解していれば、結果的に無痛分娩になったとしても、良いお産になるはずです。

小川 博康
監修:小川クリニック院長 小川 博康医学博士/日本産科婦人科学会専門医

昭和60年 日本医科大学卒業。同年 同大学産婦人科学教室入局。 平成9年 日本医科大学産婦人科学教室退局後、当クリニックへ帰属。 大学勤務中は、一般産婦人科診療、癌の治療を行い、特に胎児診断・胎児治療を専門としていた。「胎児に対する胎内交換輸血」 「一絨毛膜双胎一児死亡例における胎内手術」など、世界で一例しか成功していない手術など数々の胎内治療を成功させている。

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